偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
「……私は、紫遥様を選びます。仮面をつけていても、つけていなくても――私は、“貴方”を見ています」
その言葉に、紫遥は目を見開いた。
次の瞬間、彼は仮面のまま月鈴を強く抱きしめた。
胸に押し寄せる感情。
欲望も、罪悪感も、すべてを溶かしてしまうような、熱。
「……月鈴。俺は、おまえを……愛している」
それは、仮面のままでしか言えない告白だった。