偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー


  ***


 その夜、月鈴は眠れなかった。

(紫遥様が……私を連れて逃げようとしている)

(でも、それは……彼がすべてを捨てるということ)


 その重さを、痛いほど理解していた。
 “愛される”ということが、どれほどの罪を背負うのか――そして、夜が明ける。

 翌十五日。
 静月宮には、二人の“皇帝”が現れることになる。

 一人は、仮面の皇帝・紫遥。
 もう一人は――本物の皇帝、紫嶺。



 ふたりの愛と嘘が、ついに交錯する瞬間が近づいていた。



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