偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
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その夜、月鈴は眠れなかった。
(紫遥様が……私を連れて逃げようとしている)
(でも、それは……彼がすべてを捨てるということ)
その重さを、痛いほど理解していた。
“愛される”ということが、どれほどの罪を背負うのか――そして、夜が明ける。
翌十五日。
静月宮には、二人の“皇帝”が現れることになる。
一人は、仮面の皇帝・紫遥。
もう一人は――本物の皇帝、紫嶺。
ふたりの愛と嘘が、ついに交錯する瞬間が近づいていた。