偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
(……惹かれている、のか?)
自問するたびに、紫遥の胸は軋んだ。
ただの政略妃。寵愛も与えられていない妃のひとり。
それなのに、彼女のささいな笑みにさえ、心が揺れてしまう。
――それが、厄介だった。
「次の十五日には……距離を、置くべきか」
そう呟いた声は、どこか寂しげだった。
だが、そう思う一方で。
月鈴に触れた頬の感触が、いまだに指先から離れなかった。