偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
翌朝、静月宮は陽光に包まれていた。
「ユー様、洗濯物、干しておきますね! 今日は風が気持ちよさそうです」
紅玉の明るい声が庭に響く。
月鈴は、ちょうど文机に向かい、細かな刺繍の図案を描いていた。
宮廷内で使われる扇や布地の図柄は、妃たちの“教養”とされるため、下手なものを見せれば笑いものになる。
けれど、月鈴はその作業さえも楽しんでいた。
「風が気持ちいいわね。干し草の香りがして……翠緑を思い出す」
「本当に、ユー様って変わってます。妃様の中で、宮女といっしょに布を織る人なんて他にいませんよ……」
そう笑う紅玉だったが、その目には尊敬が宿っていた。