偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー




 その夜。
 紫嶺の黙認のもと――紫遥と月鈴は、ひそかに後宮を発った。

 妃の冠も、皇族の名も、すべてを脱ぎ捨てて。
 ただ、愛ひとつを抱きしめて。

 それは愚かだと、笑われる選択かもしれない。
 けれど、彼らにとっては唯一の“真実”だった。

 仮面の下で芽吹いた愛は、ようやく本物の光の下で息を始めた。

 ふたりの逃避行は、まだ始まったばかり。
 この恋の結末は、まだ誰にもわからない――
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