偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
静月宮に仕える侍女たちは、妃でありながら「働くこと」をいとわず、人にも優しい月鈴を密かに慕っていた。
「ねえ紅玉。昨日の……陛下、ちょっとだけ、変だったと思わない?」
「えっ?」
「いえ……気のせいかしら。いつもと同じように無言だったけど……」
月鈴は頬に手を当てた。
昨日、仮面の皇帝がそっと触れた場所。
その触れ方は、とても優しかった。
「寵愛」と呼ぶには遠いけれど、「確認するような」手つきだった。
(……なぜ、あんなふうに……)
あの皇帝に、そんな優しさがあったのかと、不思議に思う。
だが、心のどこかが――くすぐったいように、温かかった。