偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
月鈴が鎖を落とし、紫遥の胸に飛び込んだ瞬間――
「もう、嫌です……もう二度と、離さないで……!」
彼女の身体は細く震え、けれどその指は紫遥の衣をしっかりと掴んでいた。
紫遥は彼女を抱きしめ、そっと頬を撫でた。
「戻った。約束どおり」
「……ありがとう、紫遥さま」
二人の間には、何も言葉はいらなかった。
ただ――心と心が、確かに結び直された瞬間だった。