偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
ある晴れた午後、館の縁側でくつろぐ二人の元へ、三人の女官とともに現れたのは――かつての後宮にいた妃たちだった。
最初は眉をしかめ、次に苦い笑いを浮かべ――気づけば、一部の妃たちは涙を滲ませていた。
「月鈴様……まさか、こんなところでお会いするとは」
「紫遥様――いや、紫鏡様。本物の笑顔を見たかっただけです……」
そこには、再会を超えた絆と、複雑な感情が交差していた。
妃たちは最初、周囲に警戒されていた存在だった。
けれど市場で話題を呼んだ月鈴の刺繍を見て、自分にも“支えられる妻になりたい”と想いを新たにする者もいた。
長女妃の黎芳(れいほう)は、そっと月鈴の手を取って言った。
「貴女には……この国にも、新たな価値をもたらす力があります。どうか、私たちを仲間にしてください」
月鈴は涙を浮かべながら、笑顔を返す。
「ありがとうございます……ふたりで、大切に、この宮を育てていきますね」