偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
「これ、一人じゃ到底できなかったわ」
「みんなで一緒なら、何でもできる気がします」
月鈴の言葉に、妃たちは穏やかに頷いた。
“絆”は、刺繍よりも強く、宮を包む。
夜。玲珠を寝かしつけた後、紫鏡と月鈴は縁側で語らう。
「最近ね……夜中に泣くようになったの」
「そうか。それは……母の声が聞きたくなったのかもしれないな」
紫鏡は月鈴の肩に手を添えた。
「おまえは、本当にいい母で。玲珠にとって、かけがえのない存在だ」
「あなたもいい父ですよ。赤子の寝顔を見ると、なんだか世界がご褒美をくれたみたいで」
穏やかな月夜、二人の間に、ささやかな未来の音が流れた。
ある朝、陽白が紫鏡を訪ねた。
「帝都では“地方主導による改革”が議論されております。
翠耀は理想の一つとして注目されているようです」
紫鏡は静かに頷いた。
「どう動くか――時期と方法が問題だ」
「臣として申し上げます。お子様の存在と妃たちの支援があれば、民の信頼を得られるでしょう」
「……玲珠のためにも、必ず正しい選択をしなければ」