偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
夜。館に忍び寄る者あり。
冷たい風が館の扉を撫で、菖華が異変に気づく。
「紫鏡様……!」
一瞬にして闇が裂ける。
しかし、妃たちと近隣の兵たちが一斉に駆けつけ、侵入者を取り押さえた。
紫鏡は月鈴と玲珠を抱え、ざわめく群衆を背にして静かに言った。
「彼らは──“新しい帝都”を恐れる者たちの刺客かもしれない」
館には静かな緊張が漂った。
密客騒ぎの影響もあり、妃たちと協議して、小さな医療所を設けることが決まった。
月鈴は自身の経験を活かし、薬草の調合や産婦ケアの知識を伝えるために動いた。
黎芳は舎宅を提供し、麗蓮は方針を定め、菖華は村の医師たちに協力を要請した。
館に設けられた“母と子を守る場”は、すぐに住民の安心となった。