偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー


 一方そのころ、館では妃たちが「国の未来を語る座談会」を女性対象で開催していた。


「政治は男のもの……そう言われ続けてきたけれど、
 子を産み、育て、暮らしを担うのは女たちです」


 月鈴が語り、参加した女性たちが声を上げる。


「紫鏡様が戻ったら、ぜひこの声をお届けしてください」
「妃様たちが語るなら、私たちも声を出せる気がします」


 月鈴は目を細めた。


「玲珠が生きるこの国が、優しい国になりますように――」


 帰路の中、紫鏡は決意する。


「俺はもう“後宮の亡霊”じゃない。
 民の目を見る者として、“真の統治”に立つ」


 陽白がその背を押す。


「では、そろそろ“あの計画”を――」

「そうだ。“翠耀の民会”を作ろう」



 民が直接議に参加できる、小さな国の礎。
 それが、紫鏡と月鈴が歩む「家族の形をした国家」の原型だった。





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