すべての花へそして君へ③
「取り敢えず今とっても叫びたいぃぃいいーッ!!!!」
「あらあおいちゃん? 元気になったみたいでよかったわ」
「ヒイノさんっ! これ……っ、これっ!」
「ん? ……ふふっ。ひんやりシートがとってもお茶目になってるわね」
「……ちょっと、頭が混乱して熱が上がりそうだから、今日も横になってるね……」
「あらそう? 一応残ったお粥、冷蔵庫に入れてあるから食べられそうになったら言ってね。すごい作りすぎちゃったみたいだから」
「……すぐ食べる」
「それじゃあ温めてすぐ持って行くわね」
「食べに下りてくるから呼んで……」
それから、勢いよく階段を駆け上がると、背中越しに「元気になってよかったわ~」って、ヒイノさんの嬉しそうな、楽しそうな声がした。
そして、取り敢えず自室に戻ったわたしは、もう一度鏡で自分の姿をよくよく確認したのだった。
【バカですがカゼひきました】
ペリッと剥いでみたけど、ヒナタくんの字に間違いない。
……いや、そうですけどね? そうですけど……ぅぁあああ!
「誰かっ、お願いだから全部夢だと言ってくれーっ!!」
羞恥を覚えた悲痛の叫びは、降り止んだ白雪に問うても返ってくることはなく。ただ、反射した太陽が無情にも眩しさを増しただけだった。
もし、あのことやあのこととか、それこそぜーんぶ現実だったとして。もう一度、夢だと思っていた世界でやらかした自分の失言や失態その他諸々を、思い出したくはなかったが取り敢えず整理した。
「……あーっと、今すぐじゃなくていいかな、ヒナタくんに会うの」
だってさ、行かないでとか、言った気がするんだよね。帰らないでーとかさ、言っちゃった気もするんだよね。しまいには、腕にむぎゅーって抱きついたし。現実世界のヒナタくんには、絶対にしゃべってはいけないことを、つらつらと話してしまった気がするんだよ。
「……うん。少し、気持ちを整理するだけの時間をいただくことにしよう、そうしよう」
これは、決して会って気まずい思いをしたくないからとか。恥ずかしくて合わす顔がないとか。完全な逃亡だとか。そんなことではない。
そ、そう。普通に会うのはつまらないから、久々に会った感を出すために、何かサプライズ的なことをしよう。一発芸でもしてみよう。そう考えた、今。