すべての花へそして君へ③
そして噂をすれば影とはまさにこのこと。珍しいツーショットだ。
「そうだな。大変だったんだぞ、誰かさんが学校にも来ねえから」
「うぐ。面目ない」
「それなのに仕事はばっちりしてくるわ、提案とか出してくるわ。……お前、オレに何か言うことはねえか」
「そ、その節に関しましては、大変ご迷惑をおかけして……」
「オレは、お前に言いてえことが山ほどある」
「あ。……えへ?」
「笑って誤魔化すな」
「わたしだって肉眼で見たかった!」
――バシンッ! と一発、綺麗なチョップが脳天に決まった。それにタカトは「おおー見事」と言いながら、パチパチ拍手を送ってくる。最近みんな、わたしの頭をぞんざいに扱っていないだろうか。
「動画、届いたんだろ? 大成功だったからもう気にすんな」
「肝心なところが映ってなかった……」
「おい、まだ言うか」
「嘘嘘。たくさんありがとね」
正直、夢であって欲しいという願望はまだ消えていない。というのもあの後、どうにかこうにか夢の世界で終わらせたくて、いろんな策を講じてみたけれど、その全てが無駄足に終わったのだ。
理由は簡単。わたしが、忘れたくても忘れられない頭の構造してるから。チョップ程度では脳細胞もやられない石頭だからだ。
それにもし、記憶を消滅・捏造したところで、物が残っていたのだ。もう完璧に退路は断たれていた。
……え? ひんやりシートの時点で納得しろって?
いいじゃん。ちょっとくらいわたしにも、足掻く時間分けてくれたってっ。
「それで? 葵は僕に何の用事かな」
「あ、そうそう」
わたしは手元のカードを見せながら、ここまでのあらましを彼らに話した。
「その報告と、少々校内図を拝借したくて」
「やってるの葵くらいなんじゃないの」
「あれれ。やっぱりそうなの?」
「桜と違って、景品がショボいからね。ここは」
心底呆れている顔を見ると、逆にどんな景品だったのか気になるというもの。
そんなわたしの様子に気付いていながら、彼はスルーを決め込んでそのままの顔で面倒くさそうにしながら歩き始める。どうやら相当疲れているらしい。
チカくんと一度顔を見合わせ、彼の後をついて行く。
「タカトごめん。地図は他の人からもらうから、タカトはもう休んで?」
「いや、さっき十分休んだから大丈夫だよ。ありがとう」
「……ねえタカト。もしかしてさっき、上の階にいた?」
「あれ。よく知ってるね」
そこの一室を借りて、タカトは少しの間仮眠をとっていたらしい。一部屋だけ鍵のかかった部屋があったけど、まさか本当にいらっしゃったとは。
「でも、まだ疲れてるでしょう?」
「貴重な時間を無駄にするくらいにはね」
「え。ごめん……」
「あ、違う違う。言い方が悪かった」