すべての花へそして君へ③

 そして噂をすれば影とはまさにこのこと。珍しいツーショットだ。


「そうだな。大変だったんだぞ、誰かさんが学校にも来ねえから」

「うぐ。面目ない」

「それなのに仕事はばっちりしてくるわ、提案とか出してくるわ。……お前、オレに何か言うことはねえか」

「そ、その節に関しましては、大変ご迷惑をおかけして……」

「オレは、お前に言いてえことが山ほどある」

「あ。……えへ?」

「笑って誤魔化すな」

「わたしだって肉眼で見たかった!」


 ――バシンッ! と一発、綺麗なチョップが脳天に決まった。それにタカトは「おおー見事」と言いながら、パチパチ拍手を送ってくる。最近みんな、わたしの頭をぞんざいに扱っていないだろうか。


「動画、届いたんだろ? 大成功だったからもう気にすんな」

「肝心なところが映ってなかった……」

「おい、まだ言うか」

「嘘嘘。たくさんありがとね」


 正直、夢であって欲しいという願望はまだ消えていない。というのもあの後、どうにかこうにか夢の世界で終わらせたくて、いろんな策を講じてみたけれど、その全てが無駄足に終わったのだ。
 理由は簡単。わたしが、忘れたくても忘れられない頭の構造してるから。チョップ程度では脳細胞もやられない石頭だからだ。
 それにもし、記憶を消滅・捏造したところで、物が残っていたのだ。もう完璧に退路は断たれていた。

 ……え? ひんやりシートの時点で納得しろって?
 いいじゃん。ちょっとくらいわたしにも、足掻く時間分けてくれたってっ。


「それで? 葵は僕に何の用事かな」

「あ、そうそう」


 わたしは手元のカードを見せながら、ここまでのあらましを彼らに話した。


「その報告と、少々校内図を拝借したくて」

「やってるの葵くらいなんじゃないの」

「あれれ。やっぱりそうなの?」

「桜と違って、景品がショボいからね。ここは」


 心底呆れている顔を見ると、逆にどんな景品だったのか気になるというもの。
 そんなわたしの様子に気付いていながら、彼はスルーを決め込んでそのままの顔で面倒くさそうにしながら歩き始める。どうやら相当疲れているらしい。
 チカくんと一度顔を見合わせ、彼の後をついて行く。


「タカトごめん。地図は他の人からもらうから、タカトはもう休んで?」

「いや、さっき十分休んだから大丈夫だよ。ありがとう」

「……ねえタカト。もしかしてさっき、上の階にいた?」

「あれ。よく知ってるね」


 そこの一室を借りて、タカトは少しの間仮眠をとっていたらしい。一部屋だけ鍵のかかった部屋があったけど、まさか本当にいらっしゃったとは。


「でも、まだ疲れてるでしょう?」

「貴重な時間を無駄にするくらいにはね」

「え。ごめん……」

「あ、違う違う。言い方が悪かった」


< 161 / 661 >

この作品をシェア

pagetop