すべての花へそして君へ③
「少なからずわたしは謀に齧り、君も事件に関わった。それが何を意味するのか。目先のことが解決したとしても、未来は? その先は? わたしが小さな事件を解決することで、本当に全部、守れるのか」
この世界は、決して平和ではない。知ってしまったらもう、何も知らないままではいられない。それが、重ければ重いほど。それを、あの人はよく知っているんだ。
「確かに、仕事をさせるという名目で傍にいれば守りやすくなるし、その考えはわからなくもないよ? 寧ろ有難いし、それについては感謝しかないんだけど」
「……やっぱり、まだ……」
「え? ああ違う違う。これはもしもの話だよ。心配性なボスの考える、悪いヘタレ妄想。女々しい優しさ」
「(遠回しにオレにも悪口言われてる気がする)」
いけないいけない、またちょっと回りくどくなってしまった。そのせいで変にヒナタくんに心配かけちゃったよ。
「わたしね、思うんだ。いや、わかるんだ、かな」
「何が」
「【大丈夫】」
「…………は」
「もうね? 大丈夫だと思うんだよ」
「……」
息を呑む、気配がする。緩んだ腕に、そっと後ろを振り返ると、何とも形容しがたい顔がそこにはあった。
「ヒナタくん?」
「……なんで」
「へ?」
「なんで、そう思うの」
「え? ひな」
「なんで言い切れるの。理由でもあるの。根拠は」
切羽詰まった様子で矢継ぎ早に聞いてくる彼の表情は、すごく必死だ。肩を掴む手が、少しだけ痛い。
「えーっと」
理由に、根拠。それは勿論ないわけじゃない。
たとえば、わたしがやっていた仕事。特に小さな事件の解決も、コツコツとやっていたからきっと、いい方面に働きかけられてる。勿論シスターとしてのお仕事も。
それから、シズルさんの一件。彼を此方側に引き入れられたことで、釘を刺せてるんじゃないかと。きっとこれは大きいかな。
それに伴って……いるかどうかは定かではないけれど、ボスも先回りして何かしら手を回しているんだろう。わたしの気付かないところで。お陰でシズルさん以外の接触はなかったし。
理由とか、根拠とかって言うなら、きっとそういうこと。それが積み重なって……ってことになるんだろうけれど。
でもね、大丈夫だって。確実にそう君に伝えられるのはね?