すべての花へそして君へ③
彼の腕の中はとても温かくて、やっぱりお日様のにおいがする。
「厳密に言うと、取ってないんだよね、許可。取れるの?」
「はっきりとはわからないんだけど、条件はさ、クリアしてると思うんだ」
その証拠に、スマホが返ってきた。本当、直接言ってくれたらいいのに。わたしのこと嫌いなのかしらね。
「でも、まだわたしが納得してないんだ」
「あとどのくらい?」
「んー。もうちょっとかな?」
「いつぐらい?」
「もうすぐ?」
「……そっか」
曖昧な返事にも優しい返事が返ってくるのはきっと、【大丈夫】という魔法の言葉が、わたしたちに希望をくれるからだ。
「じゃあ、もうちょっとだけ。待っててあげようかな」
「ひな、……んっ」
触れた唇は少し冷たくて、かさついていて。ほんの少しだけ、潮の味がしたけれど。
「そろそろ帰ろ。寒い」
「……あはっ。はい!」
繋ぎあった手は、お互いの心はとてもあたたかくて。花咲に帰るまでずっと、優しい笑顔で溢れていた。
「ひーなたくんっ」
「あのさ。なんで小出しにしたの? 一気に話してくれてよかったのに」
「ん? ひとつは、わたしの中で整理しながら話したかったのと、一気に話すほど勇気がなくて。ちょっとずつ溜めてた」
「なんだそりゃ」
隣を歩く彼を見上げると、楽しそうに笑っている。もうその横顔に影は一つも感じなくて、わたしもつい嬉しくなる。
ぎゅっと、握る手に力を込めると、ん? と優しい反応が返ってくる。
「一個、言い忘れてたや」
「は? 何。まだなんかある」
「愛してるよ」
「………………は?」
「今日のご飯何かな? 何だと思う?」
「…………」
「んー。やっぱりここは、お赤飯かな!」
「お赤飯みたいに耳真っ赤だけど」
「ヒナタくんも顔赤いよ。茹でダコさんみたいだね」
「寒い寒い。あー寒い」