すべての花へそして君へ③

 その頃。
 日向宅と同じものが届いた幼馴染みの面々たちの反応はというと。


「へえマジか! トーマ結婚! 受付係? やるやる! 盛大にお祝いしてやらねーと!」


 八重歯の可愛いチカにゃんは、朝っぱらから大はしゃぎ。



「……えっ! ちょ、菊ちゃん菊ちゃん! 起きて! 杜真から、結婚式の招待状来た! 菊ちゃんに、友人代表挨拶して欲しいって! 書いてあるよ!! ねえ!」


 新婚ほやほやの女王様も、ベッドの上でぴょんぴょんと跳び跳ねておりました。しかし。



「……え。ちょっと、菊ちゃん?」

「……キサ」

「うん。何? 杜真結婚だって。嬉しいけどちょっと寂しいね」

「友人代表変わってくんねえ?」

「してもらったんだからやりなさい」

「……やりたくねえ」



“――今に見てろよ”


 過去に、〈つーか人の彼女見てる暇があんなら相手見つけろよ〉なんてお節介を焼いたばっかりに、ここまで内緒にされた挙げ句、いつまでも根に持たれていたとは。


「……持つべきものは、魔王様かねーこりゃ」

「……? ほら、さっさと支度!」


 高校教師は、重い重い腰を上げ、今日も仕事に勤しむそうです。





「……ヒナタくん」

「どうかした?」

「今、ちょっと聞いてみたんだけど。やっぱり誰も、トーマさんの彼女知らないって」

「やっぱりね」

「けど、なんで黙って……」

「誰か何かやらかしたんじゃない?」


 そう言った瞬間、葵も日向もひやりと寒気がしました。まるで、本当にそれが正解とでも言うように。


「……よし」

「取り敢えず、御祝儀は多めにしとこう」


 こいつだけは、もう絶対敵に回すまいと誓った、友人たちなのでした。


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