すべての花へそして君へ③
あっという間に、再来週に控えてしまったクリスマスパーティー。その直接的な準備に関わることはできなかったけれど、仕事の合間を縫って、理事長経由でチカくんに案や策の提供はさせてもらっていた。
(上手くいくといいな。謎解きプレゼント探し)
怖いもの見たさで、理事長とこっそりプレゼントの中には“柊千風からのハグ”を何個か入れる予定だ。……最後までバレませんようにっ。
「さて。わたしも当日に参加できるよう、今のうちに進められる仕事はしておきますかね」
そう思って、待ち人の彼が来る間、仕事の資料にわたしは目を通しておくことにした……のだが。
気が付いたら目蓋が下りていて。なんでか体はバッキバキ。そいえばほっぺが痛いかもー……なんて。
「ふ、わあ」
「おはよ」
「……!? ごほっごほっ」
大変だ! 最悪だ! 待ち合わせしてたのに爆睡するなんて!
慌てて大欠伸を飲み込んだら、気管に入って咳き込んだ。
「ごめんツバ」
「いいよ別に」
「……え?」
「どうしたの」
「いやそれわたしが訊きたいんだけど」
咳が落ち着いてから顔を上げると、何故か目の前には“国宝級の美女”が座っていたのだ。
深意がわからず目を瞬かせていると、彼は居心地が悪そうに視線を逸らした。
「……ちょっとした罪悪感」
「??」
不貞腐れたように頬を膨らせた彼は、尋常じゃないほど可愛かったが、どうやらこれ以上追求して欲しくはなさそうだ。
それに小さく笑いながら、ひとまず現在の時刻を確認をしようと思ったけれど、そうするまでもなく窓の外はすっかり夜。
一応確認すると、時刻は夜の8時を示していた。
「ツバサくん、本当にごめん」
「だからいいわよって言ってるじゃない」
「どれくらい待ちました……?」
「アンタが眠りに落ちるのは見届けたわね」
「来てたの!? というか、すぐ起こしておくれよ!」
「……ま、遅れたアタシも悪いし」
小さくため息を落とした彼は、心配そうにこちらを見つめながら、ゆっくりと手を伸ばしてくる。
その指先は頬に触れることはなく、直前でそっと握り込まれた。
「……化粧。誤魔化してても青白いわよ」
「いやいやこれは外回り用で、人に会ってたからね。あとチークが取れちゃったんだよ。ほら、わたし突っ伏して寝ちゃってたから」
「寝不足なんでしょ。いいじゃない。アタシといるときくらい気を抜いたって」
「いや、気を抜いたどころの話では……」
「自分の体調が限界だってこと、知れたからよかったんじゃない? 抜けてるからねアンタ」
「だからって、待ち合わせに爆睡しちゃいかんでしょ……」