すべての花へそして君へ③

「付き合い長いんだから、もうある程度の考えや気持ちもすぐ察しますよオレは」と、優しい笑顔で笑っているけれど、目の奥は笑ってないように見えた。


「オレはさ、『社長とかやってみたりしない?』って何回カナタさんに言われても、するつもりはなかったし、この考えが変わることはないと思ってたよ」


 ご飯を一口。口へと運んで。ゆっくりと食べ進める彼の、その先の言葉をじっと待った。


「……だから、今正直自分でも驚いてる」

「ひなたくん……」

「絆された……のかもしれないけど、首を縦に振ったのは、ちゃんとオレの意思だよ。ま、今どうこう言ったところで、未来でどうなるかなんてこと、さっぱりわかんないけどね」

「……うん。そうだね」


 だから彼は、父との話をわたしに教えてくれなかったのだ。
 今している話は“確定”ではないから。


「カナタさんに言われた。自分と一緒に、娘のことを支えて欲しいって。ま、言われるまでもなかったけど」

「……ふふっ」


 けれど、目一杯の野望と希望が詰まったそれに、わたしもこうしちゃいられなかった。
 父やヒナタくんが、わたしのことを支えてくれるなら。わたしも、彼らのことを目一杯支えていきたいから。


「あおい」

「ん?」

「周りからはどう言われるかわからない。だからこそ敢えてオレはこう言うね」


 ――おめでとう。

 優しい笑顔と一緒に送られたお祝い。彼が差し出したコップに、わたしの分をこつんと当てた。


「あおいも立ち上げに参加したんだってね」

「うん。だから、何とかなると思う」

「大丈夫だよ。それに、あんたのために作られたようなもんだし」

「あはは。……ありがとう。頑張るね!」

「……」

「……ヒナタくん?」

「そうは言っても、やっぱり少し寂しいか」

「え?」

「ま、オレも残念ではあるけどね」

「――!?」


 慌てて自分の身の回りを確認してみるけれど、やっぱり見間違いなどではないらしい。
 にやりと笑っている彼が持っているのは、紛う事なきわたしのスマホ。そして。


「最近妙にスマホ見てるなと思ったら」

「わああああ!」

「やっぱりあおいも、ちょっと期待したんでしょ」

「ぎゃああああッ!!」


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