すべての花へそして君へ③

 画面に映っていたのは、わたしが後で見ようと思っていた開きっぱなしの漫画アプリ。


「キスシーン多めだし、なんならやっちゃってるし。わお、あおいちゃん大胆」

「いやあああああ……!!」

「どうしよう、まさかこんなことまで求められていたとは。知らなかったなあオレ」

「も、もうやめてくれえ……」


 ジャンルはそう。オフィスラブ。
 今更言い訳したところで、それがもう全てを物語っているようなものだった。


「残念ながらここら辺のシーンは、オフィスにあおいさんいないからできないけど」


 こっちの方はできそうだよと、彼が見せてくる画面に映る一冊の漫画。
 あらすじは、上司と部下が、一つ屋根の下で暮らして恋に落ちるという……!


「ご要望は、叶えてあげないと」

「ままま、待ってくれヒナタくん……!」

「…………………………」

(あ、この沈黙は嫌な予感……)

「ねえあおい、知ってる?」

「……し、知らないなあ……」

「明日は、六回目の記念日なんだよ」

「え? あ、う、うん。そうだね?」

「だからこれなら、お互い普段とはちょっと変わった刺激になると思うよ」

「……ええ!?」


 確かに、三年ごとのイベントが恋人たちには大事だって言ったよ? それに、今年の記念日は何しようかなって、考えてたよ?? だ、だからって……。


「ま、待ってヒナタくん。まだご飯の片付けも終わってないし、お風呂だって……」

「いいんじゃない? 今日くらい」

「よくなっ、んっ」

「今日くらい、素直に抱かれて」


 ――オレに、悩みを黙ってた罰だから。


 まさか前日が反省会になるなんて。
 わたし、思ってもみなかったよ……。


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