すべての花へそして君へ③
「だからさ、現金な話もう最高に今幸せなの。夜中じゃなかったら叫びたいくらいだよオレ」
「ふふっ。嬉しいなら嬉しいで、もうちょっとわかりやすい反応くださいな」
どうやら黙っていたのは、ただ喜びを噛み締めていたらしい。
「だからまあ、オレとしては念願叶って万々歳かな」
「まだできたとは限らないのに?」
「だからわざわざ薬局まで走ってきたんでしょ」
「もしできてたとしても、休暇に入るまでの間は仕事の引き継ぎ関係で一緒にいられる時間がまた少なくなるかもしれないのに?」
「その先にオレの願望が待ってるなら、あとちょっとくらい我慢して待ってられるよ」
「けど、子どもができたら今度は子育てが忙しくてそれどころじゃなくなっちゃうかもしれないね?」
ああ言えばこう言うんだからと。意地悪なことを言うわたしに、一度だけ彼は拗ねたような表情を見せたけど。
「でも、オレが寂しいって言ったから、あおいはオレにも構ってくれるでしょ?」
そう言って唇に指を這わせる彼に、わたしの考えなんて全てお見通しなんだなと、小さく笑みをこぼす。
「ヒナタくんが寂しいのに、わたしが寂しくないわけあると思う?」
「思わない」
この日ばかりは、時間も忘れ。お互いに積もりに積もった寂しさが、一つもなくなるまで。今まで触れ合えなかった分、飽きることなくお互いの唇に触れ続けた。