すべての花へそして君へ③

 あれだけさっき、イケメン台詞吐き散らかしてくれたのに! キャラじゃないのに、頑張ってくれたのに!
 何故にここぞという時、最後ヘタレたかな。


「……限界」

「へ?」


 わたしの視線から逃げるように、腕で顔を隠したヒナタくんだったけれど。その耳が赤いのは、太陽があたたかいせいなのでしょうか。


「マジで困る」

「こ、困る?」

「目のやり場に」

「目、目のやり場……」

「綺麗だし、可愛いし」

「……!」

「それなのに、ツバサが一番最初にドレス姿見るとか」

(やっぱり気にしてるんじゃん!)

「ツバサと一緒に歩いてくるとか」

「う、うん。それについては、後ほどしっかりお叱りを……」

「そんなの気にならなくなるくらいにはなんかもう、フィルターかかってんだよ」

「……え」

「だから、……今ちょっとこっち見ないで」


 少しずつわたしから逃げようとするヒナタくんが、あまりにも可愛くて。


「ヒナタくん」

「な、何」

「ごめん」

「え?」


 今度は、わたしの方が我慢の限界。
 ヒナタくんが悲鳴を上げる間もなく足を払ったわたしは、そのまま彼を組み敷き、そしてその唇を奪った。


「隙有り」

「(いとも簡単に足払われた……)」

「あのね? ヒナタくんもすっごく格好いいよ」

「……」

「いつもいつも格好いいけど、今が一番格好いいって、自信持って言える」

「……それは、どうも」

「あと、すっごく可愛くて襲っちゃいました。ごめんね?」

「……それは、あんま嬉しくないんですけど」


 しょうがないなあと、ヒナタくんは困ったように笑う。
 起き上がっても、また押し倒されるとわかっているのか。お手上げ状態ですと言わんばかりに、花畑の上へ大きく寝そべった。


「……なんか、思い出すね」


 それは、わたしたちが出会ったあの頃のこと。


「わたしも。……ふふ。るにちゃん」

「……なに、はなちゃん」


 お互いの名前も知らず、代わりの名前で呼び合っていた日々。

 終わりは突然。再開も突然。
 きっと、あなたとこうして出会えたことが、わたしにとっての幸せそのもので。そして、それをこうして感じられるのは、本当に奇跡なんだと。そう思う。


「あおい」

「ヒナタくん」


 わたしが生きてきたこの二十八年。そして、君と歩んできた十年間。それはもう、数え切れないほどのたくさんの思い出ができたけど。
 これからも、たくさん幸せにしてあげるから。ちゃーんと、覚悟しておいてね?



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