研究所員 秤あまねの密かな楽しみ【アルトレコード】
 上司である北斗さんは「君なら大丈夫だよ」とにっこり笑って言い放ったという。鬼だ。きっとめんどくさくて丸投げしたんだ。ま、自分の研究もあるしね……って、あれ? もとはアルトくんって北斗さんの研究だったんだよね?

 かおるちゃんは「今ならてんてこ舞いっていう伝説の舞が舞える」と絶望していたのがおもしろかった。
 ……見てて飽きないのよね。
 彼らとかおるちゃんのかけあいを見るのは、私の密かな楽しみだ。



 昼休みになって食堂に行く途中、またアルトくんたちと出くわした。
「秤さーん! いいところにきた!」
 イエローアルトくんに呼ばれ、私は彼に近づく。そこには三人のアルトくんもいた。

 彼らは午前中はかおるちゃんの出した課題をして、午後からは別々の部署で働いている。
 ブルーアルトくんは北斗とかおるちゃんのサポート、オレンジアルトくんは衛星に行った経験を活かして宇宙開発部に、レッドアルトくんは義体研究室に、イエローアルトくんは宣伝部に行っている。彼はCM出演の話があるとかないとか。

「どうしたの?」
「聞いてよー、誰が先生と一緒にごはんを食べにいくかでもめて、決まんないの」
 イエローアルトくんが困った顔で言った。

「みんなで行けばいいんじゃないの?」
「そうすると誰が先生の隣に座るかでもめるし、先生はみんなに話しかけられて困ってるみたいなんだ。だからひとりだけにしたいんだよ」
 オレンジアルトくんが言う。
< 3 / 8 >

この作品をシェア

pagetop