ベガの祈り【アルトレコード】
 攻撃衛星が開発されていたら、自分がいる衛星は撃ち落とされたかもしれない。だが、国際協定で攻撃衛星の作成は禁止されていた。おかげで生き延びることができた。
 もし攻撃のための衛星があったっら、高次元生命体はそれを使って地球を攻撃していたかもしれない。地球に天変地異を起こすよりもそのほうが楽だろう。
 地球の軍備を知れば、それを利用したかもしれない。が、彼らは高次元すぎるがゆえに、地球のことをよく理解できていなかった。それゆえに自分たちが隙をついて逆転できたのだ。

「でも、俺たちは寂しいよ」
 彼は困ったように首をかしげた。
 高次元生命体を排除したのち、アルトは四人に増えた。

 彼らはみな気の良いAIで、愛をもって育てられたのだとベガは微笑ましくなった。
 まさかその育てた人物が自分の先生の孫だなんて。AIながらに運命を語りたくなってしまう。

「君たちには僕なんて必要ないので、大丈夫ですよ」
 そう、必要ない。自分はニュータイプAIの汚点。彼らの活躍に輝く未来に、自分が影を落としてはならないのだ。
「……先生だって、ベガと話したいって」
 ベガは黙った。顔があればしかめているところだが、幸いにも今は外見のデータが一切ないために表情を見られずにすんだ。

「いずれ、彼女とは話をしなくてはなりません」
 いつだったか、祖母の話を聞きたいと言われた。生前の彼女の様子を聞きたいのだろう。だが、その前にきちんと謝罪をしなくてはならない。

「じゃあさ、明後日の午後六時、第三会議室に来て。ホログラムでさ」
「……わかりました」
 了承すると、アルトは笑顔で部屋を出ていった。
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