ベガの祈り【アルトレコード】



 約束の日。
 ベガは朝からそわそわしていた。
 北斗に「なにを気にしてるの」とつっこみを入れられたが、「別に」と誤魔化した。

 五時をすぎると、北斗は用事があるからと部屋を出ていった。
 ベガは落ち着かない気持ちでぐるぐるとタグマークを回転させる。
 どうやって謝ろうか。このタグマークだけの状態ではなにをどう言っても、誠意が伝わらないかもしれない。

 しかし、謝らないという選択肢はない。
 今まで、高次元生命体のどたばたをひきずって伸ばし伸ばしにしてきた。
 彼女に言われるのなら、どんな罰だって受けよう。彼女にはその権利がある。

 できるなら、彼女の母である先生の娘にも謝りたかった。
 だが、研究所は部外者は入れないし、ベガは要注意AIであり、外出を許されていない。謝罪はできないだろう。もし高次元生命体の駆逐に協力していなければ、地上に降り次第、消去されていたに違いない。

 五時五十五分になると、ベガは回線を使って会議室の前にホログラムで現れた。
 会議室の扉は開いていて、中にアルトたちがいるのが見えた。

「いらっしゃい、ベガ!」
 オレンジの瞳を輝かせ、アルトが言う。

「ベガ、来てくれたんだ!」
 三つ編みを揺らし、小柄なアルトが言う。

「兄さん、早く入って」
 顔をのぞかせた北斗にぶっきらぼうに言われ、ベガが入ったとき。

 ぱーん! ぱん、ぱーん!
 破裂音が響き、ベガは立ち止まった。
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