男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女と新たな不安 1
「しかし、ままならないものだな」
「え?」
再び優しく抱き寄せられる。
「俺は出来ることなら毎日でもお前に会いたいのだが」
それを聞いて胸がきゅんと切なくなった。
「でも、」
「わかっている。お前を守るためにも控えるが、何かあったら遠慮なく言え」
「うん」
その温もりの中で私はこくりと頷く。
キスやそれ以上のことはまだ恥ずかしいけれど、こうしてただくっついているのは安心するし落ち着く。ずっと、こうしていられたら幸せだなと思った。
(……ずっと?)
「――って、今何時だ!?」
私はラディスを突き飛ばす勢いで身体を起こし、きょろきょろと時計を探した。
そしてすぐにこの宿の部屋には時計がなかったことを思い出した。確か一階に振り子時計があったはずだ。
「絶対もう休憩時間過ぎてるし!」
慌ててベッドから降りると、胸元がガバっと開いていることに気づいて私は奴に背を向け慌てて紐を結び直した。
普段トーラの姿でいるとき女物の下着なんてつけていないから勿論この服の下は裸で。
(見られたかも……)
お世辞にも大きいとは言えない自分の胸を見下ろし思い出したように顔が熱くなった。
と、背後から低い声がかかった。
「そういえば、お前まさかここまで飛んできたのか?」
「え?」
振り返ると、奴が眉をひそめていた。