ラストランデヴー
 異動してきたころの暗い瞳、誰も寄せつけないような緊張感――それらは離婚が原因だったはず。

 そして私を見つめる目が時折驚いたように見開かれたり、何かを確かめるように慎重な動きをするのは、もしかしたら私が田島課長の前妻に似ているからではないか。

 だとしたら私が田島課長に恋人のような関係を期待するのは、彼にとっては酷なことかもしれない。

 そう思うとふっ切れて、田島課長とはこのままの不確かな関係で十分だと感じた。

 彼が離婚のショックから立ち直り、新たな人生を再出発するときまで、私の存在が少しでも慰めになるのならそれもいいか、と。
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