ラストランデヴー
「こういうことをするのも久しぶりだな」

 ふたりが身体を重ねるだけなら、ダブルベッドは広すぎる。

 彼と最初のデートも同じ感想を持ったことを思い出し、私はフッと笑った。

「何がおかしい?」

 田島部長は鋭い目つきで私を見下ろしていた。その冷たい表情に胸がチクッと痛む。

「部長に抱かれたいと思う女性はたくさんいるでしょう?」

 素直な気持ちを告げるよりも、皮肉を言うほうが簡単だ。

 自分でもこんな女は最悪だと思う。魅力的な男性である田島部長を、私のようなあまのじゃくがいつまでも独占していたら罰が当たるだろう。

 私なんか本当に嫌われてしまえばいいんだ。

 そう思った瞬間、田島部長が少し乱暴に私の唇を覆い、バスローブの胸元を引き開けた。

 声をあげることもできず、ただ目を見開いている私に、彼は冷たい視線をよこす。

「そういうことを言うために俺を呼び出したのか?」

「そうじゃない……けど」

「じゃあ理由を言ってみろよ。それに俺の名前は『部長』じゃない」

 言いながら彼はあらわになった胸の膨らみを大きな手のひらで包み込み、円を描くように揺さぶった。

 私はこれまでにない荒々しい動作に戸惑いながらも、嫌がるどころか喜びのようなものを感じている自分に愕然とする。

 しかしどんなに熱い吐息を漏らしても彼の瞳は冷ややかなままだ。
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