ラストランデヴー
「ごめんなさい。私、田島課長には嫌われているみたいで、仕事以外の話をしたことがないの」
これは本当のことだった。私がそう言えばみんながっかりして立ち去った。
でも中にはびっくりするほどの情報通がいて、私の耳に顔を寄せてこんなことを言った。
「田島さんってバツイチなんだって。前の奥さんと結婚後、奥さんの実家近くの支社に異動したけど、去年離婚しちゃったみたい。それで本社に戻ってきたらしいよ」
私は目を丸くして情報通の彼女を見返すが、彼女は私のことなどお構いなしで田島課長に熱い視線を送っていた。
「あのちょっと寂しそうな背中がたまらないよね」
同意を求められたので、私も課長席を見る。
「ここから背中は見えないけど」
「もう、永岡さんって変な人ね」
笑いながら彼女は歩き去った。その笑顔は心底安堵したというしるしだった。
彼女たちは田島課長を見学するついでに、彼の1番近くにいる私をそれとなく牽制していく。
ぬけがけは決して許さない――と。
そのさなか、田島課長の歓迎会が行われた。
誰が呼んだのかわからないが、他部署の女性社員がゲストとして大勢混ざっていた。
これは本当のことだった。私がそう言えばみんながっかりして立ち去った。
でも中にはびっくりするほどの情報通がいて、私の耳に顔を寄せてこんなことを言った。
「田島さんってバツイチなんだって。前の奥さんと結婚後、奥さんの実家近くの支社に異動したけど、去年離婚しちゃったみたい。それで本社に戻ってきたらしいよ」
私は目を丸くして情報通の彼女を見返すが、彼女は私のことなどお構いなしで田島課長に熱い視線を送っていた。
「あのちょっと寂しそうな背中がたまらないよね」
同意を求められたので、私も課長席を見る。
「ここから背中は見えないけど」
「もう、永岡さんって変な人ね」
笑いながら彼女は歩き去った。その笑顔は心底安堵したというしるしだった。
彼女たちは田島課長を見学するついでに、彼の1番近くにいる私をそれとなく牽制していく。
ぬけがけは決して許さない――と。
そのさなか、田島課長の歓迎会が行われた。
誰が呼んだのかわからないが、他部署の女性社員がゲストとして大勢混ざっていた。