ラストランデヴー
 1次会は騒々しい中で適当な雑談をしているうちに終わり、若手を中心に2次会へとなだれ込む。ゲストの女性陣も田島課長を追いかけて来た。

 しかし2次会の予約は入れてなかったので、幹事行きつけの居酒屋に無理やり押しかけるかたちになった。

 夜は更け、店は予想以上に繁盛していた。私たちが案内されたのは、普段使われていない地下の部屋だった。

 むき出しのコンクリート壁には窓がない。その暗い部屋にあるのは古い座卓とビール瓶のケース、そしてゴミ箱だけだ。

「落ち着く部屋だな」

 そう言ったのも、それに同意したのも全て男性陣で、それまではしゃいでいた女性陣は急におとなしくなり、しばらくするとひとり、ふたりと姿が見えなくなった。


「結局残ったのは永岡さんだけか」


 1時間後それぞれの趣味の話が一段落し、場は急にシンとした。そのとき田島課長がなにげなくつぶやいたのだ。

 私は同僚の男性陣から一斉に視線を浴び、思わず苦笑した。

「私がいないほうが盛り上がるなら帰りますけど」

 腰を浮かせながらそう言うと、隣の同僚が私の腕を引っ張ってもう一度座らせる。

「みどりさんが帰るなら、俺たちも帰りますよ」

 そう言われてしまうと帰るとは言いにくい。

 結局それから1時間ほど宴は続き、終電直前にようやく解散した。
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