宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

フィロメナは自分の立場をよく理解していた。
フィロメナに王太子を生ませて傀儡の王にしたいという
ドラゴニア帝国側の思惑に気づいていたし、
アルドレイン王国側が自分をドラゴニアのスパイだ
と思っていることも。

歓迎されていないことは
初日の空気で嫌というほど理解したし、
フィロメナは過去のトラウマから
本当の自分を知られるのが怖かった。
だから濃い化粧で素顔を隠し、
他者との間に壁を作っているのだ。

では、フィロメナのトラウマとは何だろうか？
それはフィロメナの顔と体型に起因する。
素顔のフィロメナは
ゆるゆるとウェーブのかかった金髪で
青い瞳はくりくりっとしてこぼれ落ちそうなほど大きい。
いわゆるドーリーフェイスなのだ。
そして身長は小柄にもかかわらず、
それに似つかわしくない豊満な胸の持ち主。
言い方は悪いが、
男心をくすぐるプロポーションなのである。

これに関しては母親の影響を強く受けている。
フィロメナの母は西に位置する
エスメリア王国の王家の出で、
アルドレイン王国と同じく
ドラゴニア帝国の傘下に下ったのち、
フィロメナの母が皇帝に召し抱えられた。
エスメリア王国の女性は
比較的小柄ながらカーヴィな身体つきをしており、
顔も整った者が多いと評判の国だった。
美女大国ともてはやされる一方で、
困窮した女性が売り飛ばされ、
世界各国で性産業に従事させられている
という闇の側面もある。