宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける
ドラゴニア帝国にもそういった女性たちがいるようで、
フィロメナの母は「皇帝をたぶらかした娼婦」
と陰口を言われていたし、
フィロメナ自身も成長して以降は
男性たちから下心丸出しの目を向けられてきた。

異母兄にあたるマルヴァリス皇太子も例外ではなく、
「お前が父上の娘でなかったら、妾に迎えてやっていたのにな」
と頭からつま先までなめまわすように見ながら
そんな言葉を言われたこともある。
半分血のつながっている兄から
そのようなはしたないことを言われ、
フィロメナは恐怖を感じた。
それと同時に、
自分の顔や体型に
深いコンプレックスを抱くようになったのだった。

化粧はアイメイクを入念に施し、
目尻をはねあげてつり目風に仕上げる。
豊満な胸はさらしでつぶして、
胸元が完全に隠れたドレスを着用。
高いヒールをはいて低い身長をごまかす。
そうしないと自室からは絶対に出られない、
ある種強迫観念のようなものが
フィロメナを支配していた。

そうはいうものの、
フィロメナには大した公務は割り振られていない。
大半はオルランドがこなしているし、
外交や各国の要人との接見など目立つ公務は
王太后やサレハ王女が行っており、
フィロメナの出番はなかった。
お茶会を開いて社交に勤しもうにも、
招待できるような知り合いなど皆無だった。

その結果、
フィロメナは王都の福祉施設を慰問したり、
今まで誰もほとんど手をつけなかった
地方都市への巡行を行った。
息苦しい王宮を抜けて、
のんびりとした地方に安らぎを見出そうとしていたのだ。
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