そのぬくもりは。
季節は、雪が降りそうな程に冷え込んだ冬。
もうすぐクリスマスともあって、すっかり外の景色はクリスマスムードで賑わっていた。

世間はクリスマスムードでも、ミライ創造研究所は相変わらず慌ただしい。何時も通りの代り映えのない研究所の景色を映していた。


昼休憩中のニュータイプ研究室。休憩時間だというのに、中々に仕事のキリはつかない。パソコンのモニターと報告書を交互に見つめながら、読み解きたくない程の文字の羅列の情報量に、ふう、と北斗はため息をついた。

ニュータイプAIがやっと認められ始めてきたこの時期に気を抜くわけにはいかない。アルトも「あなた」も自分に出来ることを精一杯取り組んでくれているのだ。まだ夢の途中だってこと、再度自分に言い聞かせ、気合を入れる。

今日だって、何気ない日常の1ページだったはずだ。そのはずなのに。

「__なあ、北斗ちょっと良いか?大事な話があるんだけどよ」
ふいに背後から声掛けられる。オフィスチェアを回転させ、声の主に目を向けた。

すると、青年期のアルトが複雑な面持ちで北斗を見つめており、事の重大さに北斗は眉をひそめた。アルトは世間でいうツンデレな性格だ。口下手な彼がこうして折り入って声を掛けてくるのも珍しい。

「アルト、何だい改まって」

「.......北斗にしか、頼めねえんだよ」

そのアルトの震えた声音に北斗は思わず見構えた。義体にはそろそろ慣れ始めた頃だと思えば、何か別の.....ニュータイプAIに関わる重要な話の可能性もあると額に汗が流れる。応えを待つ時間が何処か長く感じた。直ぐにでも心を落ち着けようと、息を呑み込む。

「先生の好きな物を教えてくれ!」

「________...えっ???、


何て事だと、完全に拍子抜けしたのだった。

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