そのぬくもりは。
そして迎えたクリスマス当日。

「なあ、先生。ちょっと良いか?」
ぎこちない様子のアルトに「あなた」は微笑ましい気持ちで大丈夫だよと頷いた。

「あのさ、これ......先生さえ良ければ受け取ってくれねえか」
差し出された堤袋を受け取ると、またアルトは照れくさそうに顔を逸らした。

「アルト、これって、もしかして......。ふふ、今開けても良い?」
クリスマスプレゼントだと気付いた「あなた」は期待に満ちた心持で尋ねた。

「おう」

アルトが身に着けているような赤を纏った、リボンを解いていく。すると中から、色鮮やかで素敵な世界に一つだけのマグカップが顔を出したのだった。

「このマグカップもしかして、アルトが描いてくれたの?」

「そーだけど、悪いかよ」
言葉は相変わらず不器用だったが、「あなた」の気持ちもアルトは感じ取ったようで、その横顔はすっかり真っ赤になっていた。

「ううん、とっても素敵だと思って。アルトのあたたかい気持ちが伝わってくるよ、ありがとう」
アルトから贈ってもらったマグカップを大事そうに抱える「あなた」に、アルトの胸もじんわりとあたたかくなった。「あなた」に今の気持ちを伝えるべく瞳を見つめ返し、口を開いた。

「あのさ、先生。俺の世界を広げるために、いずれ世界を見に行く。色んな人と話して、色んなものを見に行く」

「うん」

「でもそれまでは、先生とまだ一緒にいたいと、思ってるから、その......これからもよろしくな」
精一杯気持ちを伝えてくれたアルトに、返す言葉なんてもうとっくに決まり切っていた。

「勿論だよ。アルト、これからもよろしくね」

お互いに微笑み合う。そんな日常がずっと続きますようにと願いながら、ふと窓を見ると研究室の外では雪が降り始めており、素敵なホワイトクリスマスになるのは明白だった。

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