そのぬくもりは。
数日後。北斗に注文してもらった「マグカップ絵付けキット」がアルトの手元に届いた。

秤に相談した際に、仕事中は集中するためやリフレッシュするためにコーヒーを飲むことが多いため、マグカップを使う機会が多いとの意見をもらった。「あなた」もコーヒーが好きなのもあって良く飲む姿を見てきたため、アルトはプレゼントをマグカップに決めたのだ。

マグカップの通販サイトも秤に見せてもらったが、素敵なデザインが多かったものの自分らしいプレゼントがしたい、贈る相手への愛情や想いをより込めることが出来ると考え、絵付けキットを選んだのだった。


マグカップ絵付けキットを開封し、何処までも真っ白なキャンパスに挑戦めいた笑みを浮かべる。愛用している画材を足元に広げ、筆を構えた。

今まではずっとパソコンのモニターの中でしか描けなかったのに、今では仮想世界の身体ではなく、自分の手で実際に描くことが出来る。そんな現実も心を熱くする。デジタルとは違う手応え、やり直しが聞かない初めての緊張感と未知への昂る気持ち。上手く描けなくて、失敗したって、その挑戦する気持ちが素晴らしいんだって先生が教えてくれた。

その心のままに筆を滑らせた。ありったけの愛を込めて。

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