欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~
お楽しみの夕食。宿の夕食処は個室ではなく、落ち着いた半個室風のカウンター席だった。

「お品書き、素敵ですね……」

そう呟きながら着席すると、隣にいたのは私より少し年下に見える男性だった。

柔らかい髪に、すっきりした顔立ち。かわいい系の、いまどきの男子だ。

ふと視線を感じて彼の方を見ると、目が合った。

「どうも。」

彼は軽く笑って、会釈した。慣れているのか、動じた様子はない。

「おひとりですか?」

「はい、一人です。」

「僕も一人なんですよ。」

少し間があって、彼が箸を置いて言った。

「仕事ですか? それとも、リフレッシュ旅行?」

「後者ですね。なんか、疲れちゃって。」

「わかります。僕も仕事に詰まって、逃げてきた感じです。」

自然と会話が続いていく。仕事のこと、趣味の映画の話、好きな食べ物……不思議と初対面とは思えないほど、言葉がポンポンと飛び交った。
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