欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~
東京に戻ったその夜、冬馬から一本の電話が入った。

「ねえ、紗月さん。ちょっと話があるんだけど。」

近くのカフェで会った冬馬は、少し気まずそうに言った。

「実は……俺、来週から紗月の会社、担当になるんだ。」

「えっ?」

思わず声が上ずった。

「それって……どういうこと?」

冬馬がカバンから取り出した資料を見て、私は目を見張る。

そこには、間違いなく私の勤務先のロゴと、見慣れたプロジェクト名があった。

「うちの会社、君の部署の案件受けてるんだ。偶然ってすごいね。」

私は唖然としながらも、心のどこかがざわついた。

「ということは……会社で冬馬に会えるの?」

「そうなるね。」

冬馬は笑って、そっと私の手に自分の手を重ねた。

「偶然じゃないよ、紗月。これは運命だと思ってる。」

心臓が、また恋に落ちた時みたいに高鳴った。

< 53 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop