私の中にあるモノ
研究室を出た私は、一人で、階下に向かった。

3階は病棟フロア…。そして、その下の1階と2階が…。

「…ここが、訓練室のフロア…」

5階は、研究室が並んでいたけれど。

今私がいる2階は、まるで学校のようだ。

教室がいくつも並んでいて、その教室の中で、誰もが熱心に、目の前の課題に取り組んでいた。

課題の内容は一人一人違うらしく、それぞれが違う訓練に励んでいた。

それにしても驚いたのは、訓練に励む成功検体達の、年齢の幅広さだ。

下は3歳くらいから、上は18歳くらいまで…だろうか。

彼らの正確な年齢を知らないから、なんとも言えないが。

まだまだ小さな幼子もいれば、既に成人しているように見える人もいる。

そして彼らは、年齢、性別関係なく。

いずれも、真剣な表情で課題に取り組んでいる。

…竜人というのは、これほどに真面目な生き物なのだろうか。

一体、何の訓練なんだろう…?



…すると、そこに。

「…あれ?みなっちゃん?」

「…?」

「姿を見ないなと思ったら、今日は重役出勤だったんだな」

突然、背後から声をかけられて。

振り向いた先には、私と同じくらいの歳の青年がいた。

…彼の額に、私と同じような、2本のツノが生えていなかったら。

人間なのか竜人なのか、区別がつかなかったことだろう。

この人も…私と同じ、竜人…。

しかも、今…私のことを「みなっちゃん」と呼ばなかったか?

みなっちゃん…。…みなっちゃん…?

「ん?どうした、ぼんやりして…」

「…いや…えぇと…」

「まだ訓練に出てなかったのか。自分は別に良いけど…。また、おみっちゃんになんか言われるぞ」

「…おみっちゃん?」

誰?

「ちょっとシンクロ率が高いからって、調子に乗ってる…って、今朝もブツブツ言ってた」

「…」

「まぁ、おみっちゃんは…前回のシンクロ率測定が低迷してたから、焦ってんのかね…。…焦ってもどうにかなる問題じゃないと思うけど」

「…」

「…?さっきからどうした?みなっちゃん。ずっと黙り込んで…」

「…えっと…」

これほど、親しそうに話しかけてくるってことは。

彼は、私のことを知ってるんだよね。

記憶を失う前の、私のことを…。

…申し訳ない。

私があなたを覚えていたら、ちゃんと答えられただろうに。

「みなっちゃん?」

「…みなっちゃんって、私のこと…だよね?」

「えっ?」

「…ごめんなさい。私、あなたのことを覚えてなくて…」

私がそう打ち明けると、彼は目を見開いて驚いた。
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