私の中にあるモノ
それは訓練と言うより…「人体実験」と言うべきものだった。

訓練は、複数のメニューから、自分に必要なメニューを一つを選択するという形式で行われた。

だが、複数のメニューと言っても、訓練項目が多少前後するだけで、ほとんどどれも同じだ。



まずは座学。

人間が調べ上げた、竜の生態や文化について教えられる。

何を教えられても、私にとっては全然…ピンと来なかった。

ちんぷんかんぷんだった、と言っても良い。

それから今度は、研究者の一人に、不思議な文字が書かれた紙を次々と見せられた。

そして、そこに何と書いてあるのか、解読してみせろと言われた。

暗号問題だろうか。

だが、私にはその文字が…。…全然読めなかった。

こちらに関しては、まったくちんぷんかんぷん…ではなく。

何だかこの文字、何処かで見たことがあるな…と、そこまでは分かったのだが。

でも、なんて書いてあるかまでは、分からなかった。

「分からない」と答える度に、教育係役の研究員は、残念そうな溜め息をついた。

…そんな落胆されても、分からないものは分からないのだから、仕方ないじゃないか。

過去の私は、この難読文字を解読出来たのだろうか?

少なくとも、今の私には無理だ。とても読めない。

「分からない」と答えると、研究員は、「じゃあこれは?」「こっちは?」と、次々と新しい資料を渡し、解読を求めてきた。

…だが、やっぱり、さっぱり分からず。

何度聞かれても、落胆されても、分からないものはどうしようもない。

分からないのに適当なことを言っても、すぐにバレるだろうし…。

何度聞いても、私が「分からない」を連発するものだから。

ついに研究員は、深々と溜め息をついて。

「じゃあ、もういいわ。次の訓練に移って」と匙を投げた。

…何だか申し訳ないけれど。

私、別に手を抜いていた訳じゃないから。

そして、その後は…むしろこれからが、本当の訓練であり。

正真正銘の…本物の、人体実験だ。

…いや、私達は人ではなく、竜人だから。

正しくは、竜人体実験、と言うべきなのだろうが…。

名称なんてどうでも良い。

こちらの「訓練」の内容は…あまり、話したくない。

ただ、昨日、近江さんがあんな姿になっていた…その理由は、よく分かった。
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