私の中にあるモノ
私はまず先に、「道具」を取りに、中庭に行った。
その次に訪れたのは、5階の研究室。
竜人研究のホープだと言われる、山口教授の研究室だ。
…こんな夜中だと言うのに。
「やぁ、皆宮じゃないか」
山口は研究室の電気をつけて、白衣を着て、コンピューターの前に座っていた。
…まだ起きてたんだ。
計算違いだったよ。
眠っていれば、もっと簡単だったのに。
それどころか山口は、私が片手に持っているものを見ても、少しも動揺しなかった。
むしろ、笑顔を見せるほどの余裕だった。
「こんな夜中なのに、随分と物騒なものを持ってるんだなぁ」
「…」
私が、中庭に取りに行ったもの。
それは、鎌だった。
除草用の、草刈り鎌。
…物騒かな、これ。
昼間に見ると、ただの草刈り鎌なのに。
深夜に見ると、こんなものでも立派な武器に見えるから、不思議だよね。
実際私は、この草刈り鎌を、草刈りの為ではなく。
武器の代わりにする為に、持ってきたのだ。
武器の割には、非常に貧弱である。
ましてや、この竜人研究所には、飛んでいるヘリコプターを落とすくらい、強力な兵器があるのだ。
それなのに、私の武器は、この草刈り鎌が一本だけ。
とても頼りない。
だけど、これだけで充分だ。
「腕を一本」、もらうだけなら。
「で、どうかしたの?」
「山口…。…私、思い出したの」
「へぇ?」
山口は、私が草刈り鎌を持っているというのに、そんなことは全く気にせず。
興味深そうに、私を見つめた。
「記憶喪失、戻ったんだ?」
「そうだね」
「それはそれは…。興味深いね、一体何がきっかけで…」
きっかけなんて、どうでも良いんだよ。
「想像だけど、多分今の君は、かつてないシンクロ率を叩き出してるんだろうな」
「…」
そうね。私もそう思う。
だって今の私は、私の中にいる「竜の記憶」がある。
今の私は、もう人間じゃない。竜人でもない。
…祖竜の意志を受け継ぎしモノ。
「後学の為に、是非シンクロ率の測定を…」
「そんなことをしている暇はないの」
「…ふぅん?」
私は、私の役目を果たす。
その為に来た。
「私は、彼の…祖竜の願いを叶えなければならないの」
「…」
「だから…邪魔をしないで」
「…成程」
山口は目を細め、足を組んで、私に微笑みかけた。
「いつか、君のような存在が現れると思っていた。竜人研究を進めれば、いつか…。…君はこの竜人研究の、大きな到達点だ」
「…」
「素晴らしい。これまでたくさんの研究を重ね、たくさんの命を犠牲にしてきた…その価値があったよ」
山口の笑みは、とても「たくさんの犠牲」を惜しんではいない。
ただただ、知的好奇心を満たし、満足した少年のような笑みだった。
その次に訪れたのは、5階の研究室。
竜人研究のホープだと言われる、山口教授の研究室だ。
…こんな夜中だと言うのに。
「やぁ、皆宮じゃないか」
山口は研究室の電気をつけて、白衣を着て、コンピューターの前に座っていた。
…まだ起きてたんだ。
計算違いだったよ。
眠っていれば、もっと簡単だったのに。
それどころか山口は、私が片手に持っているものを見ても、少しも動揺しなかった。
むしろ、笑顔を見せるほどの余裕だった。
「こんな夜中なのに、随分と物騒なものを持ってるんだなぁ」
「…」
私が、中庭に取りに行ったもの。
それは、鎌だった。
除草用の、草刈り鎌。
…物騒かな、これ。
昼間に見ると、ただの草刈り鎌なのに。
深夜に見ると、こんなものでも立派な武器に見えるから、不思議だよね。
実際私は、この草刈り鎌を、草刈りの為ではなく。
武器の代わりにする為に、持ってきたのだ。
武器の割には、非常に貧弱である。
ましてや、この竜人研究所には、飛んでいるヘリコプターを落とすくらい、強力な兵器があるのだ。
それなのに、私の武器は、この草刈り鎌が一本だけ。
とても頼りない。
だけど、これだけで充分だ。
「腕を一本」、もらうだけなら。
「で、どうかしたの?」
「山口…。…私、思い出したの」
「へぇ?」
山口は、私が草刈り鎌を持っているというのに、そんなことは全く気にせず。
興味深そうに、私を見つめた。
「記憶喪失、戻ったんだ?」
「そうだね」
「それはそれは…。興味深いね、一体何がきっかけで…」
きっかけなんて、どうでも良いんだよ。
「想像だけど、多分今の君は、かつてないシンクロ率を叩き出してるんだろうな」
「…」
そうね。私もそう思う。
だって今の私は、私の中にいる「竜の記憶」がある。
今の私は、もう人間じゃない。竜人でもない。
…祖竜の意志を受け継ぎしモノ。
「後学の為に、是非シンクロ率の測定を…」
「そんなことをしている暇はないの」
「…ふぅん?」
私は、私の役目を果たす。
その為に来た。
「私は、彼の…祖竜の願いを叶えなければならないの」
「…」
「だから…邪魔をしないで」
「…成程」
山口は目を細め、足を組んで、私に微笑みかけた。
「いつか、君のような存在が現れると思っていた。竜人研究を進めれば、いつか…。…君はこの竜人研究の、大きな到達点だ」
「…」
「素晴らしい。これまでたくさんの研究を重ね、たくさんの命を犠牲にしてきた…その価値があったよ」
山口の笑みは、とても「たくさんの犠牲」を惜しんではいない。
ただただ、知的好奇心を満たし、満足した少年のような笑みだった。