聖女の愛した花園
「本当にあなたは優秀ね。流石は私の妹」
「当然です。お姉さまのためですもの」
誇らしげに言い切る筒見さんは、笠吹さまの跡を継いで黒薔薇寮長となる。
彼女は高等部から入学した珍しい外部生だ。だからこそ型にハマっていないというか、凝り固まったリリス生とは違って大胆な発想を見せる。同学年であり同じ妹である筒見さんは、密かに負けたくない存在だ。
私だって、さゆりお姉さまを絶対に守るのだから。
*
礼拝堂を出た後、また一人お姉さまに声をかける人物がいた。
「さゆり、ちょっといいかな」
「渚」
「次の大会のことで相談がしたいんだけど」
「ああ、そうね。私も話したいと思っていたわ」
彼女の名は姫宮渚、黒薔薇寮の副寮長。お姉さまと同じ弓道部に所属していることから、笠吹さまと比べるとお姉さまと友好的だ。
「寮長会合の前か後に時間取れる?」
「では後でどうかしら」
「わかった。よろしく」
クールにそう言うと、コホンと咳払いして姫宮さまは立ち去った。