聖女の愛した花園
その隣に控えるのは彼女の妹、筒見流奈である。黒髪をポニーテールに結いているのがトレードマークで、笠吹さまと並ぶとアジアンビューティーといったところ。
二つの寮は昔は対立関係にあったと聞くが、今は寮同士がいがみ合うことはない。学院行事によっては寮対抗で行うことになるけれど、特に優劣の差はない。
しかし笠吹さまは学院に入学する以前からさゆりお姉さまとは顔見知りらしく、何かとお姉さまのことをライバル視している。
「本日の寮長会合、忘れていないでしょうね」
「もちろんよ」
「いつもあなたの信者が小鳥のようにうるさいから、静かにさせてちょうだい」
こんな風にお姉さまに嫌味を言う学院では稀有な存在。だけどお姉さまはニッコリと微笑む。
「ええ、もちろん」
「本当にわかっているの? この前も……」
「蘭華お姉さま」
笠吹さまを制したのは、妹の筒見さん。
「既に手は打ってあります。寮長会合の場所は西棟の第二会議室で行うとそれとなく周囲に伝えました。本来は東棟ですが」
「流石よ、流奈」
「お姉さまの気を散らせるようなことはいたしませんわ」