聖女の愛した花園
お互い口には出さなかったが、何となく似たようなことを考えている気がした。さゆりお姉さまがそう願っているように思えてしまうのだ。犯した罪は消えないし、一生かけても償い切れる重さでもない。
それでも前を向いて生きて欲しい、誰にでも人生はやり直せると――お姉さまならそう仰るような気がする。本当のお姉さまの気持ちはもう、永遠に知ることはないけれど。
「これ」
私は一通の手紙を差し出した。
「警察がさゆりお姉さまの部屋から発見したものです。引き出しの一番奥にあったそうですよ」
その封筒には美しい文字で「浬へ」と書かれていた。
「これをあなたに渡したかったんです」
「手紙……? ありがとう」
今日姫宮さんと会う一番の目的が果たされた。
「それじゃあ、私はそろそろ戻りますね」
「うん、ありがとう。流奈にもよろしく伝えて」
「はい。今度二人で会いに行きます」
「え、本当に?」
「赤ちゃんに、ですよ」
「ああ……うん、会ってやって」
ぐるりと学院の周りを一周したところで、私たちは別れた。彼の後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
正直彼に対して複雑な思いを抱いているのは変わらない。彼もまた罪深いことを犯したと思う。それでも幼い命をお姉さまの分まで守り育てると誓った彼にも――生きていて欲しいと思う。
「さようなら……浬さん」
名前が決まったというメッセージと写真が届いたのは、翌日のことだった。