聖女の愛した花園
お手紙によくお名前が登場する数名は覚えてしまいました。正に青春を謳歌されているといったところでしょうか。学院での寮生活をとても楽しんでおられるようで、少し寂しくもありましたが喜ばしく拝見しておりました。
それゆえ、あの日――
「理子に大事な話があるの。こちらへ来てくれる?」
お嬢様から直接そのようなお電話をいただいたとき、私は何か胸騒ぎのようなものを覚えました。どうやら体調を崩されたようなのです。けれど、リリスは外部の者の立ち入りに厳重な手続きを要するため私がお嬢様のもとに伺えたのは、連絡を受けてから二日後のことでございました。久しぶりにお目にかかったお嬢様は相変わらず美しく完璧で……でもその瞳には、何か違うものが宿っておりました。そしてその薄紅色の唇から紡がれた言葉は、耳を疑うような衝撃的な内容だったのです。
「……本当なのですか?」
「ええ、本当よ」
お嬢様は、ふざけておいでの様子ではありませんでした。メイドたるもの、どんな事態にも冷静沈着であるよう教え込まれてまいりましたが、あのときばかりは動揺を隠せませんでした。
「ど、どうして……」
「お願い、理子。このことは誰にも言わないでほしいの」
「そんなこと、できません……」