聖女の愛した花園
「お願い、あなたにしか頼れないのよ」
その一言に、心がぐらりと揺れました。
「お父様とお母様には言わないで」
「そ、そんな……」
「私はもう、決めたの」
――あのお嬢様が。
我儘一つおっしゃらず常にご両親の期待に応え続けてきたあの方が、初めて自らの意志を貫こうとしておられたのです。長年お仕えしてきた私にも、それは初めてのことでございました。白雪家のメイドとしては、即刻旦那様と奥様にご報告すべきでした。
ですが私は、さゆりお嬢様にお仕えする者としてお嬢様のご意志を尊重して差し上げたいと思ったのです。
「……承知いたしました」
「ありがとう、理子」
お嬢様は、ほっとしたように笑われました。その微笑みはいつも通りまるで聖女のようでした。
私は思わず、ちらりとお腹に視線を落としました。まさか……マリア様なわけあるまいし――。
人には誰しも知られたくない顔、暴かれたくない秘密というものがございます。清楚可憐なさゆりお嬢様にも、きっと誰にも見せぬ一面があるのでしょう。ならば、私が守りましょう。
お嬢様の秘めたる仮面を――最後まで。