聖女の愛した花園
第一章【わたしだけのお姉さま】
中高一貫のミッション系全寮制女子校、私立聖リリス女学院。「清く正しく美しく」をモットーにした創立百五十年という歴史と伝統のある女学院である。リリスに通う生徒は皆名家の令嬢ばかりで、リリスの出身というだけで箔がつくという折り紙付きだ。
そんなリリスで一際目立ち、誰よりも美しく神々しい存在――白雪さゆり。白百合寮の寮長で現在三年生である。品行方正、文武両道、容姿端麗という正に完璧な学院のマドンナであり、象徴とも言える存在だった。更には旧華族の末裔、白雪本家の一人娘であり国内有数の大財閥・白雪財閥会長令嬢と家柄も申し分ない。胸元に光る金色の円の中に、百合の花が彫られたバッジが今日も輝いていた。白百合寮長に代々受け継がれる寮長としての証だ。
「ご機嫌よう、透」
「ご機嫌よう、さゆりお姉さま」
今日もさゆりお姉さまは私に優しく微笑みかけてくださる。女神のような微笑みを見ているだけで、心の底から嬉しくて震えてしまう。財閥令嬢であることを鼻にかけることはなく、慎ましやかで誰に対しても優しく平等で聖女のような方なのだ。