聖女の愛した花園
もう息をしていない。お姉さまが笑いかけてくれることはない。鈴の音を転がすような美しい声を聞くこともできない。悲しみ以上に激しい怒りが私の身を焦がす。許さない、絶対に許さない。
誰が私からさゆりお姉さまを奪ったの!
暴れだしたくなる気持ちを必死に抑え込み、深呼吸した。落ち着け、怒りに洗脳されてはいけない。私がすべきことは、お姉さまの命を奪った犯人を見つけ出すこと。白日のもとに真実を晒してみせる。
私は改めて四人に視線を向けた。乙木佳乃子、笠吹蘭華、姫宮渚、筒見流奈。この中にさゆりお姉さまを殺害した犯人がいる。絶対に見つけ出してみせる。
「……本気なの?」
か細い声で声をかけたのはそれまでずっと黙りこくっていた筒見さんだった。
「犯人を見つけ出すなんて」
「本気です」
私はきっぱりと言い切る。
「今日はほとんどの生徒が出払っていた。ここに駆け付けたのは私たちだけ。つまり――」
「この中に、犯人がいると言いたいの?」
筒見さんの言葉に頷く。全員の表情が一気に青ざめた。
「私は違う! 私じゃないわ!」
笠吹さんが金切り声をあげる。
「だってそんなこと、あり得ないじゃないっ」