聖女の愛した花園


「透ったら、また夜更かししていたの? 隈ができているわ」
「試験前で勉強に熱中してしまって」
「そう。努力家なところは透の美点だけれど、無理はしないでね」
「ありがとうございます、お姉さま。でも私、頑張ります!」

 だって私、お姉さまの妹なんだもの。
 お姉さまの妹に恥じない存在でありたい。私にとって、さゆりお姉さまこそ生きる道標そのものなのだから。

 聖リリス女学院にはシスター制度がある。上級生と下級生がペアを組み、姉妹の契りを結ぶというものだ。姉となった上級生は妹の下級生に時に優しく、時に厳しく指導する。一対一の関係は特別で、友人とはまた違った絆が育める。

 昔は全員シスターを組むことが義務付けられていたそうだけど、今はそうでもない。シスターを組む生徒もいるし、誰にも縛られたくないと卒業するまでシングルを貫く者もいる。最近はシスターを組まない生徒の方が多くなってきた。
 だが寮長は必ず自分の妹を決めることになっている。それは自分の後継者を選ぶため。

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