聖女の愛した花園
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リリス女学院には礼拝堂がある。立派なステンドグラスがある豪奢な礼拝堂で、その中にはマリア像が佇んでいる。
その前で熱心に祈りを捧げる黒髪でショートヘアの生徒がいた。
「まあ、さゆりさんに透さん。ご機嫌よう」
私たちに気づくとにこやかに挨拶をしてくれた彼女は、白百合副寮長の乙木佳乃子。
「ご機嫌よう、佳乃子」
「ご機嫌よう、佳乃子さま」
佳乃子さまは生徒たちの中でも特に熱心なクリスチャンで、毎日マリア様に祈りを捧げることを日課としていた。その姿は模範的なリリス生そのものだと先生たちの間でも評判なのだとか。
「お二人とも、今朝はご一緒だったのですね」
「ええ、佳乃子は今日も熱心ね」
「私なんて、これくらいしかできることがありませんから」
「そんなことはないわ。佳乃子はいつも副寮長としてよくしてくれている。佳乃子がいてくれてとても助かっているわ」
「さゆりさん……」