聖女の愛した花園

「これからも頼りにしているわね」
「はい」

 佳乃子さまはそばかすのある顔を綻ばせ、嬉しそうにはにかむ。

 さゆりお姉さまと佳乃子さまは中等部の頃から仲が良く、親友同士だ。控えめで大人しい性格の佳乃子さまはいつもどこか遠慮がちだけれど、お姉さまはそんな佳乃子さまのことを大切に思っている。

 お二人には親友という特別な信頼関係があり、時々入っていけない空気になる。それが羨ましいと思っていることは、お姉さまには絶対言えない。

「私今日は日直でした。お先に失礼しますね」

 恭しくお辞儀して立ち去る佳乃子さまと入れ替わりに礼拝堂へ現れたのは、このお二人だった。

「あら、さゆりさん。ご機嫌よう」
「ご機嫌よう、蘭華(らんか)さん」

 黒薔薇寮長、笠吹(かさぶき)蘭華。この学院のもう一人の顔だ。日本人とフランス人のハーフであり、プラチナブロンドの髪に青い瞳という西洋風のお顔立ちがとても目立つ。胸には黒薔薇寮長に受け継がれる薔薇のバッジが光っていた。

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