聖女の愛した花園


 ようやくさゆりに対する思いの名前を知ったけれど、願わくば気づかないままでいたかった。一度気づいてしまった想いは止められない。どろどろとした醜い独占欲と嫉妬心が私の心を焼き尽くす。こんな感情を抱いていると知ったら、きっとさゆりは私から離れていってしまうだろう。

 あれ以来さゆりとは話していない。何度か私を見て話したそうにするさゆりを見かけたけれど、徹底的に彼女を避けた。だって、彼女の顔を見たらこの気持ちが溢れてしまいそうだから。私の独り善がりの身勝手な想いでさゆりを傷つけたくなかった。でもこの気持ちをどうすることもできなくて、それがとても苦しくて。もがき苦しんだ結果、私はさゆりへの好意を徹底的に押し殺すことにした。

「さゆりさん、ご機嫌よう」

 久々に私から挨拶をすると、さゆりは目を丸くしていた。一拍置いてから挨拶を返した。

「ご機嫌よう」
「白百合寮長の妹になったそうね。負けないわよ、私もいつか寮長になるんだから」

 他の生徒たちが見ている前で、堂々と宣戦布告をした。急に何事かとざわついていたが、敢えて人前で見せつけた。それから私はたまにさゆりと顔を合わせる度に挑戦的な言葉を浴びせた。

「蘭華さん、今日もさゆりさんに張り合っていますわ」
「本当にプライドの高いこと」


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